
健康プラス vol.1 表紙
薬局訪問
第1回 すずらん薬局 松井啓子先生
「私のスタイルは、『生活のことを説明する』『患者さんにあった提案を行う』『患者さん白身が選択する』というとてもシンプルなものです」
と凛とした視線を向ける
すずらん薬局の松井啓子先生。
「心の持ち方」一つで
どんどん良い方向に進みます。
どんな病気でも治る方法や、完治は無理でも
今より楽になる方法は絶対にあります。
あきらめないでください」
と穏やかに、
しかし力強く語る松井先生に話を聞いた。
「生活のことを説明する」
この薬を飲めば、この病気が治るという方程式はありません。
当店には皮膚病や不妊症、痛みや自己免疫疾患の患者さんが多く来られますが、
食べものや睡眠など基本的な事がなおざりになっている方が目立ちます。
基本が欠落しているのに上からいくら足しても無理。
だから患者さんにはまず生活のことを話します。
自然治癒力を高めるために患者さん白身が努力する必要があることを
わかってほしいのです。
自分の力で元気になることが基本中の基本です。
「患者さんにあった提案を行う」
大切なのは、治療法が患者さんにあっていること、そして患者さんが続けられることです。
症状はもちろんのこと、経済的な側面を考慮することも必要です。
限られた条件の中でベストの選択ができるよう知恵を絞ります。
患者さんの立場からいろいろな提案ができることが重要です。
「患者さん自身が選択する」
患者さんに出すものは、まず飲んでもらって、家で資料に目を通してもらい、
どんな小さな疑問点でも納得してから飲み始めてもらいます。
私は「私が飲みたいもの」と「家族に飲ませても犬丈夫なもの」しか
患者さんにはすすめません。
しかし「これで本当に治るのかしら?」と患者さんが思っている間は、
いくらいいものであってもその患者さんには効きません。
第一、患者さんは飲まないでしょう。
結局、効くか効かないかは患者さん次第です。
患者さん白身がその治療法を自分で選択しない限り、
どんなよいものでもその力を発揮することはできません。

緑あふれる店内でゆっくりと相談できる
原点は、人と直接関わりたいという思い
このスタイルを確立するまでには
ずいぷんと紆余曲折がありました。
父が癌で亡くなった時、
私はまだ十一歳でした。
大柄で丈夫な父でしたが、
闘病中はまるで実験用のモルモットにされてしまったように感じていました。
医療について、そして人が死ぬことについて
大きな衝撃を受けました。
癌の治療薬を開発したくて薬学に進んだものの、
薬の開発がいかに難しいかという現実に直面し、処方箋の薬を出すだけの毎日に
意味を見出せないまま薬剤師になって一年半が経ちました。
そしてイギリスのロンドンに渡ったのですが、
そこで「皆に肋けてもらっている」と強く感じました。
人と直接関わりたいという思いから心理学講座にも通いました。
二年後に帰国しましたが、人と直接関わりたいと思う気特ちは依然として強く、
通訳ガイドになるために昼は薬局で働き、夜は学校に通う生活が続きました。
しかし試験に落ち続け、やはり「いわゆる薬剤師」になるしかないのかと
思い始めていたころ、ある講演会でこの言葉に出会ったのです。
「医者にできなくて薬局にできることはたくさんある。
西洋医学は急性病に、東洋医学は慢性病に、
心療内科は心理的な病気の治療に適している。
治療家は一つに偏るのではなく、いろいろ組み合わせて全人的医療を目指すべきだ。
患者さんのその人丸ごと、生活ごと見なくてはいけない」
その瞬間、「これだ!」と思ったのです。
勤めていた薬局では責任ある仕事を任されていましたが、やりたいことができませんでした。
そこで一念発起し、すずらん薬局を 立ち上げました。

「あきらめないで」と語る松井啓子先生
今より楽になる方法は絶対にあります
患者さんには「あきらめないで」
と言いたいです。
たとえ病院で治らないと言われたとしても、
余命を宣告されたとしても、
それでも治る方法や、完治は無理でも今より楽になる方法は絶対にあります。
病気になると「なぜ私ばかりがこんなつらいめに」とか「本当に治るのか」と考え込んでしまいますが、心と体は一つだから、
文句ばかり言っている人はその否定的な心が体に作用してしまいます。
まずあるがままの自分を受け人れてみましょう。
次に何をしたらいいか考えて、それを淡々と、
しかし着々と実行していけば状況は改善されます。
「治るかもしれない」と思えれば、どんどん良い方向に進みます。
誠実であること、それだけです
薬局は詰まる所、人対人のやり取りだと思っています。
患者さんに誠実であること、これだけは常に意識しています。
自信が持てないことや本で読んだだけのことをいくら口にしても迫力がありません。
治してもいないのに治したといっても患者さんには伝わりません。
実際に治した上での「大丈夫、治ります」という言葉にこそ意味があります。
私は自分が正しいと思ったことを誠意を持って伝えるだけです。
「すずらん薬局に来てよかった」患者さんにそう言ってもらえることが一番の励みです。
しっかりと地に足をつけて地道に自分の考えを積み重ね、
仕事を通じて地元に貢献したいと思っています。